説明・コメント COVID-19が大流行である。COVID-19じたいは新顔だが、 ウイルスいっぱんについて、それから(ウイルスによるものにかぎらないが)パンデミックについての知見は、人類はそれなりに持っていると信じる。

みすず書房は充実している。いわゆる科学エッセイのよい翻訳が多い印象をうける。『史上最悪のインフルエンザ』も、原題からするとえらい煽る題名だなあとおもったが、不思議とみすず書房らしい本におさまるのはフォントの力か。もしかしたら、今年は、COVID特需により、みすず書房が躍進するかもしれない。

また適宜追加します。推薦する本があれば ツイッター @iepmihs まで教えてください。

*スーザン・ソンタグ『隠喩としての病い/エイズとその隠喩』 https://www.msz.co.jp/book/detail/08357.html 父が頭痛持ちで、かなり辛そうにしているのを見てはいるものの、しかし、その息子であるわたしは頭痛に悩まされたことがほとんどなかった。というか、わたしが頭痛と世間でよばれているものがなにかを知ったのが最近で、それまでは、二度寝をすると頬のうらが張っている感じがすることがあるよな、くらいに思っていた。そこはよく考えればこめかみと呼ぶべき部分だったが、そのことに気づいていたとしてもこめかみは「頭」には入らないだろうと思っていた。もしかしたら気づいていないだけ、という可能性はあるが、とにかく、頭痛というものへのなんというか憧れがあった。神経質そうで、なんかかっこいい。それは、たとえば、緊張したときに腹を下してトイレにかけこむのと、頭が痛い、としかめっつらをしていることを比べてみればよくわかるだろう。――こういう、病気がもつ、病気以上の意義、意味、機能、それらをソンタグは隠喩と呼び、からくりを看破していく。結核もそういう、いってみればカッコいい病気だよね、ということはソンタグが書いている。

*ガブリエル・ガルシア・マルケス『コレラの時代の愛』 https://www.shinchosha.co.jp/book/509014/ 戦後のスペイン語圏を代表する作家の……とやると、どうせ堅苦しいんでしょ、と思うかもしれない。 たいていの傑作というものはそういう偏見?と戦っている。いちおうあらすじというか設定を書いておくと、 男が座って小便するに至るまで、とか、マナティ密猟者を中洲に置き去り!だとか、小話が2頁ごとに連続するので、何も起こらないのではなくて常になにかが起きている、って感じなのでいっさい飽きない。 外国語文学にありがちな名前が憶えられない問題も、いちいちフルネームで(ウルビーノについては博士、までつく)書くし、そもそも登場人物がかなり少ないのでそこまで問題なし。ま、でも時系列がすこし崩れる小説なので、簡単なメモをつくりながら読むことをすすめます。 ラストはダイヤモンド・プリンセス号を彷彿とさせる、感染症発生時の客船。

*山内 一也『ウイルスの意味論』 https://www.msz.co.jp/book/detail/08753.html

*アルフレッド・W・クロスビー『史上最悪のインフルエンザ:忘れられたパンデミック』 https://www.msz.co.jp/book/detail/07452.html

*パトリック・ドゥヴィル『ペスト&コレラ』 https://www.msz.co.jp/book/detail/07838.html

*フィリップ・クリルスキー『免疫の科学論:偶然性と複雑性のゲーム』 https://www.msz.co.jp/book/detail/08693.html

*カミュ『ペスト』 https://www.shinchosha.co.jp/book/211403/ 杉並区の図書館、

*ジョヴァンニ・ボッカッチョ『デカメロン』 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000168469 隔離で飽きた人たちがお互いに面白話をしあう、という設定。

*コニー・ウィリス『ドゥームズデイ・ブック』 https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/11437.html

*押谷 仁、瀬名 秀明『パンデミックとたたかう』 https://www.iwanami.co.jp/book/b226007.html

*ウイルスとはいったいいかなる存在者か。哲学のテーマとしても熱いようです https://doi.org/10.1016/j.shpsc.2016.02.008

*ダニエル・デフォー『ペスト』 http://www.chuko.co.jp/bunko/2009/07/205184.html

*カート・ヴォネガット『スラップスティック』 https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/10528.html パンデミックによる世界の終わりを描いたもの?